大判例

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大阪高等裁判所 平成2年(う)398号 判決

原判決は,おおよそ,つぎのとおり説示して,被告人に対し無罪を言い渡した。

銃砲刀剣類所持等取締法2条2項にいう「刀」,「剣」,「やり」,「なぎなた」,「あいくち」等の「刀剣類」とは,社会通念上それぞれの類型にあてはまる形態・実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきところ(最高裁昭和31年4月10日第三小法廷判決・刑集10巻4号520頁,同昭和36年3月7日第三小法廷判決・刑集15巻3号493頁参照),本件刃物は一見して「わきざし様の刀」に類似しているが,①その実体は刺身包丁の刃体部分にラワン材の柄と鞘を付けたものに過ぎないと認められ,その外形から直ちに「刀剣類」であるとすることはできない。更に,②本件刃物の刃体部の峯の厚みは2.5ミリメートル未満の部分が先端から24.5センチメートル(刃体の長さの約75パーセント)であること(昭和30年7月26日警察庁通達は,あいくちの要件として刃の厚みが2.5ミリメートルを超えることを挙げている。),③刃体部は硬い鋼(炭素含有率0.86パーセント)と柔らかい鋼(炭素含有率0.10パーセント)を張り合わせて造られていること,④刃体の半面が平らであること,⑤茎の部分が刀の中子とは異なっていること,などが認められるので,本件刃物は,「刀剣類」中の「刀」(わきざし)とはその形態・実質を異にすることが明らかであり,「刀剣類」に該当するとは解されない。

2 控訴趣意とこれに対する判断の要旨

論旨は,要するに,本件刃物は,もともと刺身包丁であったとしても,改造されて「刀」としての形態・実質をそなえる刃物になっていると解すべきであって,原判決は銃砲刀剣類所持等取締法2条2項の「刀剣類」中の「刀」についての解釈を誤り,ひいては同法3条1項,31条の4第1号の解釈適用を誤ったものであり,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである,というのである。

そこで,所論及び答弁にかんがみ記録及び証拠物(本件刃物)を調査し,当審における事実取調べの結果も加えて検討し,以下のとおり判断する。

まず,原判決が,銃砲刀剣類所持等取締法2条2項にいう「刀」等の「刀剣類」の意義につき,最高裁判例を引用して,社会通念上「刀」等の類型にあてはまる形態・実質をそなえる刃物を指称するものと解すべきである,としているのは正当であって,当裁判所も同様に解するものである(所論もこの解釈を前提とするものである。)。問題は,具体的に本件刃物が社会通念上「刀」としての類型にあてはまる形態・実質をそなえるものといえるか否かである。関係証拠によると,本件刃物は,もともと刃の先端が折れた刺身包丁様のものであったが,被告人の知人がグラインダーで研磨して刀身様の切っ先を付けるなどして仕上げるとともに,元の柄を取りはずし,新たにラワン材で作った柄と鞘を装着したものであるが,その刃体は,鋭利な片刃で,全体が滑らかに研磨されて光沢を放ち,先端には切っ先が形成され,しのぎが刃先と峯の間の中央やや峯に近いところを刃の根元から切っ先の先端まで走り,長さは,32.3センチメートル,幅は,柄に密着した部分が最大であるが柄の幅の中に納められ,先端に向けて細くなっているものの切っ先近くまではほとんど同じ幅を有し,そこから弧を描いて切っ先を形成してその先端に至っており,厚みは,鋭く尖った刃の先端から3センチメートルあたりが0.2センチメートル,24.5センチメートルの部位からは0.25センチメートル,30センチメートルの部位からは0.3センチメートルになっていること,柄は刃体の幅より太く,刃体の根元の刃まち部分が柄に押し入れて埋められ,2本の釘をくさびとして固定されていること,柄の長さは,21.2センチメートルで,その断面は楕円であり,ふりかぶって切り付けたり刺突したりするときに両手で握り締めるのに適したものになつていること,刃体部分は0.10パーセントないし0.86パーセントの炭素含有率であって,鋼質性であることが認められ,これらの特徴に照らすと,本件刃物は切断及び刺突能力に欠けるところはなく,社会通念上「刀」の類型にあてはまる形態・実質をそなえていると解するのが相当である。原判決が,①で指摘する本件刃物がもともと刺身包丁であったという点,及び②ないし⑤で指摘する点は,いずれもそれ自体が改造後の本件刃物を「刀」とみる妨げにならないことは明らかであるし,これらを総合考慮しても,右判断は動かないところである。原判決は,銃砲刀剣類所持等取締法2条2項の「刀剣類」中の「刀」についての解釈を誤り,ひいては同法3条1項,31条の4第1号の解釈適用を誤ったものというほかない。

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